保護犬を迎えた直後は、「早く家に慣れてほしい」「できることを増やしてあげたい」と思うこともあるかもしれません。
けれど、新しい家は、その犬にとって初めて見る景色や音、においでいっぱいです。まずは何かを教えることよりも、どんな場所で落ち着けるのか、何に戸惑うのかを知る時間にしてみましょう。
最初から、いつもの様子が見えるとは限らない
新しい環境に来たばかりの犬は、静かにしていることもあれば、よく動き回ることもあります。食事や睡眠、家族との距離の取り方にも、それぞれのペースがあります。
数日間の様子だけで「人が苦手」「しつけが必要」と決めなくても大丈夫です。まずは生活の中で、落ち着いて過ごせる時間が少しずつ増えているかを見ていくと、変化を受け取りやすくなります。
急がず見ておきたい3つのこと
1. 自分から休める場所があるか
ケージやベッドの近くへ自分から行く、部屋の隅で横になるなど、犬が休む場所を選べているかを見てみましょう。
人の出入りが多い場所や、大きな音が続く場所では落ち着きにくいこともあります。家族から離れすぎず、生活動線の真ん中ではない場所を候補にしながら、休みやすそうな位置を探していけます。
2. 毎日の流れを予測しやすそうか
食事、散歩、休む時間など、暮らしの流れが少しずつ見えてくると、犬にとっても家での過ごし方をつかみやすくなります。
最初から時計のように正確な生活にする必要はありません。家族の無理のない範囲で、食事や外へ出る時間が大きく変わりすぎないようにしてみるだけでも、様子を観察する目安になります。
3. 落ち着いている時に、穏やかに関われるか
犬が自分から近づいてきた時や、静かに過ごせている時には、短く声をかけたり、好みに合うものを使って気持ちよく過ごせる時間を作ったりできます。
反対に、距離を取りたそうにしている時は、無理に触れ合おうとせず、近くにいながら様子を見ることもひとつの関わり方です。望ましい行動を見つけた時に、穏やかに応えることを積み重ねていきましょう。
困った行動と決める前に、環境を見直してみる
夜に落ち着かない、来客時にそわそわする、家の中を行ったり来たりする。こうした様子があっても、すぐに「問題行動」と決める必要はありません。
寝床の位置、室内の音、家族の帰宅時間、散歩や食事の前後などを見直すと、きっかけが見えてくることがあります。気になった時は、日時と状況を短くメモしておくと、家族で共有したり、獣医師へ相談したりする際にも役立ちます。
しつけは、暮らしを知るところから始まる
しつけは、決められたことを早く覚えてもらうためだけのものではありません。その犬の様子を見ながら、安心して一緒に暮らせることを少しずつ増やしていくための時間とも考えられます。
新しい家で過ごす最初の時期は、犬のことを知るための大切な時間です。急がず、比べず、休める場所と毎日の流れを整えながら、その犬らしいペースを見つけていきましょう。
新しい環境に慣れるまでの時間や、落ち着きやすい関わり方には個人差があります。食べない状態が続く、眠れない、強い不安が続くなど、気になる様子がある時は、無理に慣らそうとせず、譲渡元やかかりつけの獣医師へ相談してみましょう。
参考リンク
コーネル大学獣医学部:Moving to a new home with your dog
新しい家に移る際、静かで安全な場所を用意して、少しずつ環境に慣れる考え方を確認できます。
https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/riney-canine-health-center/canine-health-topics/moving-new-home-your-dog
コーネル大学獣医学部:Anxious behavior
食事や休息などの生活リズムと、犬が休める場所を整える考え方を確認できます。
https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/riney-canine-health-center/canine-health-topics/anxious-behavior-how-help-your-dog-cope-unsettling-situations
AVSAB:Position Statement on Humane Dog Training
犬のトレーニングと行動への対応に、報酬を用いる方法を推奨する専門団体の見解です。
https://avsab.org/wp-content/uploads/2021/08/AVSAB-Humane-Dog-Training-Position-Statement-2021.pdf